フードデリバリー配達中の犯罪被害:遭遇時の対処と日頃の備え
フードデリバリーの配達業務は、様々な場所へ移動し、見知らぬ相手と接する機会も少なくありません。安全には十分に配慮して業務にあたることが大切ですが、残念ながら、配達中に窃盗や強盗といった犯罪被害に遭遇する可能性もゼロではありません。
特に経験が浅い配達員の方は、このような予期せぬ事態にどう対処すれば良いか分からず、不安を感じることもあるかと存じます。
この記事では、万が一、配達中に犯罪被害に遭遇してしまった場合の具体的な対処法と、日頃からできる防犯対策について解説します。ご自身の身を守り、安全に業務を続けるために、ぜひご一読ください。
配達中に考えられる犯罪被害の種類
配達員が遭遇しうる犯罪被害には、いくつかの種類が考えられます。
- 窃盗:
- 車両(自転車、バイクなど)の盗難
- 配達用のバッグや備品(スマートフォン、現金など)の盗難
- 置き配をした商品の盗難(これは主に注文者や店舗とのトラブルになりますが、広義には窃盗に関連します)
- ひったくり:
- 走行中や停車中にバッグなどを奪われる
- スマートフォンなどを操作中に奪われる
- 強盗:
- 刃物などで脅され、現金やスマートフォン、車両などを奪われる
- 詐欺:
- 偽の注文や指示により金銭をだまし取られる
これらの犯罪は、いつ、どこで発生するか予測が困難であり、遭遇した際には冷静な判断が求められます。
万が一、犯罪被害に遭遇した場合の対処法
もし配達中に犯罪被害に遭遇してしまった場合、最も重要なのはご自身の安全を確保することです。冷静さを保ち、状況に応じた適切な行動をとることが大切です。
1. ご自身の安全を最優先する
犯人と抵抗したり争ったりすることは非常に危険です。所持品や売上金よりも、ご自身の生命や身体の安全を最優先してください。相手が刃物などを持っている場合は特に、無理な抵抗は避けるべきです。相手の要求に応じることが、結果的に被害を最小限に抑えることにつながる場合があります。
2. 警察に通報する
安全な場所に移動した後、速やかに110番へ通報してください。通報時には、以下の情報を伝える必要があります。
- 何が起きたか(例: ひったくりに遭った、強盗されたなど)
- 被害に遭った場所(正確な住所や目印など)
- 被害の状況(時間、犯人の特徴、逃走方向、使用された凶器など)
- 被害品(盗まれたもの)
- ご自身の名前と連絡先
状況が許せば、犯人の特徴(性別、年齢、服装、身長など)、使用車両、逃走方向などを記憶に留めておくと、警察の捜査に役立ちます。しかし、危険を感じる場合は無理に観察しようとせず、安全確保を優先してください。
3. プラットフォームに報告する
警察への通報と並行して、またはその後に、利用しているプラットフォームのサポートへ速やかに連絡し、被害状況を報告してください。
- いつ、どこで、どのような被害に遭ったのか
- 警察に通報したか
- 盗まれたものの中に配達中の商品や売上金が含まれているか
プラットフォームによっては、事件後の対応についてアドバイスを得られたり、補償に関する情報を提供してもらえたりする場合があります。また、同様の被害を防ぐために情報が共有される可能性もあります。
4. 可能な範囲で証拠を確保する
もし安全な状況であれば、被害現場の状況を写真や動画で記録したり、目撃者がいればその情報(連絡先など)を聞いたりすることが、後日の手続きや捜査に役立つ可能性があります。しかし、これも危険を冒して行うべきではありません。
5. 周囲への助けを求める
被害直後で冷静な判断が難しい場合は、近くにいる人(店舗の店員、通行人など)に助けを求めることも有効です。通報やプラットフォームへの連絡を代わりに依頼することも検討してください。
日頃からできる犯罪被害への備え
犯罪に遭わないための日頃からの備えも非常に重要です。意識することでリスクを減らすことができます。
1. 周囲への警戒心を常に持つ
配達中は、配達先の建物や道だけでなく、周囲の状況にも気を配りましょう。不審な人物や車両がないか、人気のない場所に立ち入る際は特に注意が必要です。スマートフォンを操作しながら歩く、停車中に操作に夢中になるといった状況は、ひったくりなどに狙われやすくなるため避けるべきです。
2. 人通りの多いルートを選ぶ
たとえ多少遠回りになっても、人通りや街灯が多い安全なルートを選ぶことを検討してください。特に夜間や早朝の配達では、暗く寂しい道は避けるようにしましょう。
3. 高価な持ち物の管理を徹底する
配達中、特に高価なブランド品やアクセサリーなどを身につけるのは控えましょう。現金やスマートフォンといった貴重品は、外から見えにくい内ポケットや、盗難対策の施されたバッグに入れるなど、管理を徹底してください。
4. 多額の現金の持ち運びに注意する(代引きなど)
もし代引きなどで多額の現金を取り扱う機会がある場合は、その保管方法に十分注意が必要です。必要以上の現金を常に持ち歩かないようにしたり、売上金はこまめに両替したりするなど、対策を検討してください。
5. 防犯グッズの活用
防犯ブザーやライトなど、簡単な防犯グッズを携帯することも有効です。万が一の際に身を守る手段となり得ます。
6. 夜間配達の注意点
夜間は日中よりも視界が悪くなり、犯罪の発生リスクが高まる傾向があります。無理のない範囲で稼働時間を調整したり、安全なエリアを選ぶなどの工夫が必要です。視認性の高い服装や反射材などを着用することも、事故防止だけでなく防犯上も有効です。
7. 不審な状況への対応
配達先や店舗で不審な人物に遭遇したり、いつもと違う雰囲気を感じたりした場合は、無理に配達や受け渡しを完了させようとせず、プラットフォームのサポートに連絡して指示を仰ぐことも検討してください。
被害後の対応と相談先
被害に遭ってしまった後は、身体的な手当てはもちろん、精神的なケアも必要になる場合があります。また、警察の捜査に協力したり、プラットフォームとのやり取りを行ったりすることになります。
警察やプラットフォームとの連携
警察には、事件発生時の状況を正確に伝えるように協力してください。プラットフォームには、被害により業務に支障が出た場合や、アカウントに関する問題が発生した場合など、適宜状況を報告し、必要なサポートについて確認しましょう。
専門機関への相談
もし精神的に大きな負担を感じたり、事件に関連して法的な問題(加害者への損害賠償請求など)が発生したりした場合は、一人で抱え込まず、専門家への相談を検討してください。
- 警察: 事件に関する相談や被害届の提出
- プラットフォームのサポート: 事件に関する報告、業務への影響に関する相談
- 弁護士: 損害賠償請求などの法的な相談
- 精神科医やカウンセラー: 精神的なケアに関する相談
- 労働組合など: 労働問題としての相談、サポート
まとめ
フードデリバリー配達員として安全に稼働するためには、交通安全や体調管理だけでなく、予期せぬ犯罪被害への備えも重要です。
万が一の事態に遭遇した際は、まずご自身の安全確保を最優先し、速やかに警察とプラットフォームへ連絡することが基本となります。そして、日頃から周囲への警戒心を怠らず、リスクを減らすための行動を心がけることが大切です。
この記事でご紹介した情報は一般的なものであり、個別のケースについては状況が異なる場合があります。もし不安なことや困ったことがあれば、決して一人で悩まず、警察、プラットフォームのサポート、そして必要に応じて弁護士や労働組合といった専門家への相談を検討してください。安全な配達業務のために、必要な知識を持ち、適切に行動できるよう準備しておきましょう。