もしもの時、どうする?フードデリバリー配達中のハラスメント対策
フードデリバリーの配達業務は、様々な場所で多様な人々と接する機会があります。このため、予期せぬトラブルに遭遇する可能性も残念ながらゼロではありません。特に経験が浅い配達員の方にとっては、どのようなトラブルが起こりうるのか、そしてもしもの時にどう対応すれば良いのかが分からず、不安を感じることもあるかもしれません。
このサイトでは、配達員の皆様が安心して業務に取り組めるよう、労働上の権利や直面しうる問題、そしてその対処法について正確な情報を提供しています。今回は、配達中に遭遇する可能性のある「ハラスメント」に焦点を当て、その事例と具体的な対応方法について解説します。
配達現場で起こりうるハラスメントとは
ハラスメントとは、一般的に、相手の意に反する不快な言動によって、精神的・肉体的な苦痛を与えたり、就労環境を害したりする行為を指します。フードデリバリーの配達現場においても、様々な形でハラスメントが発生する可能性があります。
具体的な事例としては、以下のようなケースが考えられます。
- 注文者からのハラスメント:
- 配達員への過度なダメ出し、暴言、人格否定といった精神的な攻撃
- 執拗な連絡やつきまとい行為
- 身体的な接触を伴う行為や性的な言動(セクシャルハラスメント)
- 店舗関係者からのハラスメント:
- 待機中の配達員に対する不当な扱い、嫌がらせ
- 暴言や威圧的な態度
- 第三者からのハラスメント:
- 配達中や待機中に通りがかりの人からの誹謗中傷、冷やかし
- 車両などに対する嫌がらせや妨害行為
これらの行為は、配達員の尊厳を傷つけ、安全に働く権利を侵害するものです。決して一人で抱え込む必要はありません。
もしもハラスメントに遭遇したら:具体的な対処法
万一、配達中にハラスメントに遭遇してしまった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。まずはご自身の安全を最優先に考え、落ち着いて対応することが重要です。
1. ご自身の安全を最優先に
危険を感じたり、身の危険が迫るような状況であれば、その場から速やかに離れることを最優先してください。配達を完了させることよりも、ご自身の安全と健康が何よりも重要です。
2. 冷静に、そして毅然とした態度で
感情的にならず、冷静に対応することを心がけてください。相手の要求に安易に応じたり、曖昧な態度をとったりすることは、状況を悪化させる可能性があります。「そのような言動はやめてください」など、毅然とした態度で拒否の意思を伝えることが有効な場合もあります。ただし、相手を刺激しないよう、状況を冷静に判断してください。
3. 状況と証拠の記録
後々の対応のために、発生した状況をできる限り正確に記録しておくことが極めて重要です。
- 日時と場所: いつ、どこで発生したか。
- 相手の特徴: 相手の服装、年齢層、話し方など、特定につながる情報。注文者の場合は氏名や注文番号。
- 言動の内容: 具体的にどのような言葉を浴びせられたか、どのような行為を受けたか。可能であれば、正確な言動をメモしておきます。
- 状況の証拠: 可能であれば、音声や動画での記録が有力な証拠となり得ます。ただし、相手に無断で録音・録画をすることについては、プライバシーの問題等が発生する可能性もありますので、状況に応じて慎重に判断する必要があります。周囲の状況(防犯カメラの有無など)や、一緒にいた人の証言なども証拠になり得ます。
記録は、スマートフォンのメモ機能やボイスレコーダー機能などを活用できます。
4. プラットフォームへの報告
ハラスメントが発生した場合、速やかにプラットフォームのサポート窓口へ報告してください。多くのプラットフォームでは、アプリ内やウェブサイトに問い合わせフォームやサポート機能が用意されています。
報告する際は、上記で記録した情報(日時、場所、相手、言動内容、証拠など)を可能な限り詳しく伝えることが、プラットフォーム側が状況を把握し、適切な対応(注意喚起、アカウント停止など)を行う上で役立ちます。
5. 必要に応じて専門機関へ相談
- 警察: 暴行、脅迫、つきまとい(ストーカー行為)、名誉毀損など、犯罪行為にあたる可能性がある場合は、迷わず警察に相談してください。被害届の提出などを検討できます。
- 弁護士: 法的な観点から対応を検討したい場合や、損害賠償請求などを考えたい場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
- 労働組合など: 配達員の権利擁護に取り組む労働組合などに相談することも有効です。労働者としての立場や、プラットフォームとの交渉についてアドバイスを得られる場合があります。
- 公的な相談窓口: 各自治体や法テラスなど、無料または低額で相談できる公的な窓口もあります。
ハラスメントを未然に防ぐための対策
完全に防ぐことは難しいかもしれませんが、リスクを減らすためにできる対策もあります。
- 夜間配達時の注意: 人通りの少ない場所や暗い道での滞在は避け、明るく開けた場所を選ぶ、不審な人物がいないか周囲を常に警戒するなど、安全に配慮した行動を心がけてください。
- 配達エリアや時間帯の検討: 自身の経験や土地勘に合わせて、より安全だと感じるエリアや時間帯を中心に稼働することも一つの方法です。
- 不審な注文への対応: 通常とは異なる内容の注文や、やり取りに不審な点がある場合は、安易に対応せず、一度プラットフォームのサポートに相談することを検討してください。
一人で抱え込まないことの重要性
ハラスメントは、身体的な被害がなくとも、精神的に大きな負担となることがあります。不安や恐怖、怒りといった感情を一人で抱え込まず、信頼できる友人や家族に話を聞いてもらったり、必要であれば専門の相談機関(カウンセリングなど)を利用したりすることも大切です。
また、フードデリバリー配達員として共通の課題を持つ仲間と情報交換をしたり、労働組合などを通じて組織として声を上げたりすることも、問題解決や再発防止につながる場合があります。
まとめ
フードデリバリー配達中にハラスメントに遭遇する可能性は残念ながら存在します。しかし、その多くは理不尽で不当な行為であり、配達員の皆様が我慢したり、一人で抱え込んだりする必要は一切ありません。
もしもの時は、まずご自身の安全を確保し、冷静に状況を記録し、速やかにプラットフォームへ報告してください。そして、状況に応じて警察や弁護士、労働組合など、適切な専門機関に相談することを検討してください。
これらの情報が、配達員の皆様がより安心して業務に取り組むための一助となれば幸いです。ただし、個別の事案については状況が異なり、最適な対処法も変わる可能性があります。ご自身の判断が難しい場合や、法的な対応が必要と思われる場合は、専門家へ相談することを強くお勧めいたします。