デリバリーワーカーの権利

フードデリバリー配達中の職務質問:適切な対応ガイド

Tags: 職務質問, 警察, トラブル対応, 配達員, 安全対策

はじめに

フードデリバリーの配達業務中、思わぬ状況に遭遇し、対応に迷うことがあるかもしれません。特に、運転中に警察官から声をかけられたり、職務質問を受けたりすることは、経験が浅い配達員の方にとっては不安を感じる出来事の一つでしょう。

職務質問は、必ずしも何か悪いことをしたから行われるものではありません。しかし、適切に対応する方法を知らないと、余計な時間や労力を費やしたり、不必要な誤解を招いたりする可能性もあります。

この記事では、フードデリバリー配達中に職務質問を受けた際に、どのように対応すれば良いのか、法的な側面も踏まえながら具体的に解説します。落ち着いて対処するために、ぜひ最後までお読みください。

職務質問とは何か

まず、「職務質問」とは何かを理解しておきましょう。日本の警察官には、不審な挙動をしている人物に呼び止め、質問する権限が与えられています。これは、犯罪の予防や捜査、公共の安全と秩序維持を目的として行われます。

重要な点として、職務質問は原則として「任意」で行われるということです。これは、質問に答えるかどうかは基本的には個人の自由であることを意味します。ただし、公衆の安全や交通の安全のために緊急を要する場合など、状況によっては警察官の指示に従う必要が生じるケースもあります。また、その場から立ち去ろうとする際に、質問を終えるまで引き止められることも法的に認められています。

配達中に職務質問を受けた際の基本的な対応

実際に配達中に警察官から職務質問を受けた場合、どのように対応するのが適切でしょうか。

  1. 落ち着いて対応する 突然呼び止められると驚くかもしれませんが、まずは落ち着くことが大切です。焦ったり不審な態度を取ったりすると、かえって状況が複雑になることがあります。深呼吸をして、冷静に対応することを心がけてください。

  2. 丁寧な言葉遣いを心がける 警察官に対しては、丁寧な言葉遣いで対応しましょう。高圧的な態度や反抗的な態度は、無用なトラブルの原因となります。質問には正直に、誠実に答えるように努めてください。

  3. 身分を明らかにする 氏名や住所などを聞かれた場合、これを拒否する明確な権利は確立されていません。配達員として稼働中であれば、その旨を伝え、求めに応じて身分証明書(運転免許証など)を提示することが一般的です。配達アプリの画面を見せることで、現在業務中であることを示すのも有効な場合があります。

  4. 聞かれたことには具体的に答える 「どこから来て、どこへ行くのか」「何をしているのか」といった質問には、現在行っている配達業務について具体的に答えてください。例えば、「〇〇から商品をピックアップして、△△のお客様にお届けに向かっている途中です」のように説明します。

所持品検査や車両検査を求められた場合

職務質問に付随して、カバンの中を見せたり、自転車やバイクの車体や積載物を見せたりする「所持品検査(任意捜査)」を求められることがあります。

所持品検査は、職務質問とは異なり、明確に任意です。つまり、原則として拒否することができます。もし所持品検査を求められた場合は、「任意とのことですが、今は業務中であり急いでいるため、申し訳ありませんがお断りさせていただきます」のように、丁寧な言葉で拒否の意思を伝えても構いません。

ただし、明らかに犯罪行為に使われたと思われる物を持っているなど、犯罪の嫌疑が濃厚な状況においては、任意とは言え検査に応じることが事実上強く求められる場合もあります。しかし、そうでない限りは、プライバシーに関わる事項ですので、ご自身の判断で対応して問題ありません。

もし、任意であることを伝えられた上で所持品検査に同意する場合は、警察官の指示に従ってください。検査の際には、立ち会うことが可能です。

対応の記録を残すことの重要性

職務質問を受けた日時、場所、対応した警察官の所属や氏名(尋ねれば教えてもらえます)、質問された内容、自身の回答、所持品検査の有無などをメモしておくことは、万が一、後日トラブルになった場合に役立ちます。可能な範囲で、記録を残しておくことをお勧めします。

不当な対応だと感じたら

もし、職務質問の過程で警察官から不当な扱いを受けた、あるいは強圧的な対応をされたと感じた場合でも、その場で警察官と口論になることは避けるべきです。まずは冷静に対応し、対応が終わった後に、警察署や各都道府県警察の監察部署、または弁護士などに相談することを検討してください。

まとめ

フードデリバリー配達中の職務質問は、誰もが経験する可能性のある出来事です。しかし、その場で慌てず、適切な知識を持って対応することで、スムーズに状況を乗り切ることができます。

職務質問は原則任意であること、所持品検査はさらに任意性が高いことを理解し、丁寧かつ正直な対応を心がけてください。また、後日のために対応の記録を残すことも有効です。

ここで述べた情報は一般的なものであり、個別の状況によって対応が異なる場合があることをご承知おきください。もし対応に不安を感じる場合や、不当な対応を受けたと感じた場合は、弁護士などの専門家への相談を検討することをお勧めします。安全な配達業務のために、正しい知識を持って臨みましょう。