フードデリバリー配達中の「あれ?おかしいな」注文・商品に関するトラブルと適切な対応
フードデリバリーの配達業務を行っていると、時に予期せぬトラブルに遭遇することがあります。特に、注文内容や商品そのものに関する問題は、配達中にその場で判断や対応を求められる場合が多く、経験が浅い配達員の方にとっては不安の種となりやすいものです。
この記事では、配達中に起こりうる代表的な「注文・商品に関するトラブル」を取り上げ、それぞれの状況に応じた具体的な対応方法を解説いたします。正しい知識を身につけ、冷静に対処することで、不要な責任を負うリスクを減らし、自信を持って業務に取り組めるようになることを目指します。
配達中に遭遇しうる注文・商品に関するトラブル事例
配達中に発生する注文や商品に関するトラブルは多岐にわたりますが、特に頻繁に起こりうる事例としては以下のようなものが挙げられます。
- 注文内容と違う商品が渡された場合: アプリに表示されている商品と、店舗から受け取った商品が異なる、あるいは数量が一致しないといったケースです。
- 商品の一部が足りない場合: セット商品や複数の注文品を受け取った際に、一部の商品が欠けているケースです。
- 商品が破損している、あるいは汚れている場合: 受け取り時や配達中に、商品の容器が潰れている、中身が漏れている、外装が汚れているといったケースです。
- 受け取った商品に明らかな異物混入や品質問題が見られる場合: 開封されているわけではなくても、外見から見て明らかに問題がある状態のケースです。
これらの問題は、原則として店舗側の準備段階で発生したものが大半です。しかし、配達員が商品を預かった後で気付くことも少なくありません。
トラブル発生時の基本的な考え方と対応ステップ
注文・商品に関するトラブルが発生した場合、最も重要なことは「自己判断で状況を収拾しようとしない」ことです。配達員はプラットフォームと業務委託契約を結んでおり、配達業務を遂行する役割を担っています。商品そのものの不備や注文内容との差異に関する責任は、原則として店舗やプラットフォームが負うべきものです。
トラブル発生時には、以下の基本的なステップで対応を進めることを推奨します。
- 状況の確認: まず、どのような問題が発生しているのかを正確に把握します。受け取り時であれば、その場で店舗スタッフに確認することが望ましいですが、すでに店舗を離れてしまった場合は、状況を冷静に整理します。
- 証拠の記録: 問題が発生している状況を写真や動画で記録します。破損している箇所、足りない商品、注文内容との差異がわかる部分などを明確に撮影します。後でプラットフォームに報告する際に、状況を正確に伝えるための重要な証拠となります。
- プラットフォームへの連絡: 直ちに配達アプリを通じて、プラットフォームのサポート窓口や指示された連絡先に状況を報告します。この際、ステップ2で記録した証拠写真などを添付できる場合は、併せて提供します。
- プラットフォームからの指示を待つ: サポートからの指示があるまで、自己判断で商品を破棄したり、注文者に異なる商品を届けたり、無断でキャンセルしたりといった行為は避けてください。多くの場合、サポートから具体的な対応方法(例: 店舗に戻る、そのまま注文者へ届ける、商品を破棄するなど)が指示されます。
- 指示に従って対応を遂行: プラットフォームからの指示に基づき、配達業務を進めます。この間のやり取りや指示内容も、可能であればスクリーンショットなどで記録しておくと良いでしょう。
- 事後報告: 対応完了後、必要に応じて改めてプラットフォームに事後報告を行います。
事例別:より具体的な対応方法
上記の基本的なステップに加え、個別の事例に応じた注意点を以下に示します。
注文内容と違う商品を受け取った、商品が足りない場合
- 店舗での受け取り時: アプリの注文詳細と、店舗スタッフが渡す商品をその場で確認する習慣をつけましょう。品数が表示されている場合は、数を数えることも有効です。違いに気づいたら、その場で店舗スタッフに伝え、確認・修正を依頼します。
- 店舗を出た後に気づいた場合: 安全な場所に停車し、速やかにプラットフォームに連絡します。状況を説明し、指示を待ちます。店舗に戻るよう指示される場合や、そのまま配達を続けるよう指示される場合があります。注文者には、プラットフォームからの連絡があるまで、配達員側から商品違いについて伝える必要はありません。
商品が破損している、汚れている場合
- 店舗での受け取り時: 受け取る際に商品の状態を確認します。外装に明らかな破損や汚れがある場合は、その場で店舗スタッフに伝えます。新しい商品との交換を依頼できるか確認するか、あるいはプラットフォームに連絡して指示を仰ぎます。
- 配達中に気づいた場合: 安全な場所に停車し、破損・汚れの状況を写真に撮ります。プラットフォームに連絡し、状況と撮影した写真を報告します。配達を続けるか、どう対応するか指示を仰ぎます。
- 注文者に渡す際に気づいた場合(推奨されないケースですが): 本来は配達前に気づくべきですが、万が一、注文者の目の前で気付いた場合は、正直に状況を伝え、すぐにプラットフォームに連絡します。決して配達員が個人的な判断で値引きや交換の約束はせず、プラットフォームからの指示があるまで待つ姿勢を示します。
受け取った商品に明らかな異物混入や品質問題が見られる場合
- 受け取り時に商品の状態(特に開いていないパッケージ越しにわかる明らかな問題)を確認します。疑わしい点があれば、無理に配達せず、その場でプラットフォームに連絡し、状況を説明します。写真等で証拠を残し、指示を待ちます。飲食物の安全に関わる重要な問題であるため、慎重な対応が必要です。
注文者への対応に関する注意点
トラブル発生時、注文者から状況について質問されたり、クレームを受けたりする可能性があります。
- 基本的に、配達員は注文・商品に関する責任を負いません。 責任は店舗またはプラットフォームにあります。
- 注文者には、「店舗で準備された商品を、そのままお届けする役割であること」「商品に関する問題については、プラットフォームにご連絡いただくと、プラットフォームまたは店舗から適切な対応がされること」などを丁寧にお伝えします。
- 配達員がその場で返金や商品の交換を約束することはできません。必ずプラットフォームを通じた対応をお願いしてください。
- 感情的にならず、落ち着いて対応することが重要です。状況がエスカレートしそうな場合は、安全を確保することを最優先し、プラットフォームのサポートに連絡して指示を仰ぎます。
記録の重要性
どのようなトラブルであっても、その状況、プラットフォームとのやり取り、かかった時間などを記録しておくことは非常に重要です。これにより、後日問題になった際に、自身の対応が適切であったことを証明できたり、場合によっては補償を請求したりする際の根拠となります。配達日時、店舗名、注文番号、発生した問題の詳細、プラットフォームに連絡した時間、指示内容などをメモ帳やスマートフォンのアプリで記録する習慣をつけることをお勧めします。
まとめ
フードデリバリー配達中の注文・商品に関するトラブルは避けられない場合もありますが、正しい知識と落ち着いた対応によって、問題を適切に処理し、自身の責任範囲を明確にすることができます。
最も重要なのは、トラブルが発生したらすぐにプラットフォームに連絡し、指示を仰ぐことです。自己判断はせず、必ずプラットフォームのガイドラインに従って行動してください。また、状況を写真などで記録する習慣をつけることも、万が一の際に自身を守るために役立ちます。
この記事で解説した内容は一般的なものです。個別のケースについては状況が異なる場合もありますので、判断に迷う場合や問題が解決しない場合は、必要に応じてプラットフォームの窓口や、状況によっては労働組合など専門機関への相談を検討してください。正確な情報に基づいた適切な行動を心がけ、安全かつ安心して配達業務を行いましょう。